【管理栄養士が解説】妊活におすすめの食材は?献立コツもご紹介!

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妊活を始めて栄養のことが気になるものの、忙しくてつい偏った食事になってしまっていませんか?ここでは、妊活期に特に大切な栄養素がとれるおすすめの食材、簡単に準備できる献立のコツをご紹介します。食事を見直して妊娠しやすい身体を作り、今後の妊娠に備えましょう。

食事は身体づくりの基本

妊活中は、妊娠しやすい身体を作ることが大切です。その後の妊娠・出産に備えるためにも、妊活中から身体作りを意識して過ごしましょう。

身体は食べたものでできているため、日々の食事の選び方がとても重要になります。しかし、日本では若い女性の栄養不足による「やせ」が社会問題になっています。

2019年に厚生労働省が行った調査1)によると、「やせ」の女性は20歳以上で11.5%を占めています。20代女性に限ると20.7%、5人に1人が「やせ」の状態です。

身体に必要な栄養が不足すると、月経異常や無月経が起こりやすくなり、妊娠しにくい状態につながります。女性が「やせ」の状態で妊娠した場合、子供が低体重で生まれることで将来の生活習慣病になるリスクが高まります。2)

また栄養不足では、疲れやすい、骨が弱くなる、肌や爪・髪の潤いがなくなるなどの変化も起こります。

栄養不足になりやすい食事の例を以下に示します。当てはまる場合でも、食事を見直せば身体は変わっていきます。とりたい栄養素と食事のポイントを知り、今後の食生活に役立てましょう。

栄養不足になりやすい食事の例

  • 1日3食食べていない
  • おにぎりだけ、パンだけなどで済ませることが多い
  • カロリーを気にして肉や魚はあまり食べない
  • インスタントやレトルト食品に偏りがちである
  • お菓子が食事になることがある

妊活中に特に意識してとりたい栄養素

・たんぱく質

3大栄養素のひとつで、筋肉や骨、臓器など、体の組織を作る成分です。また、体の働きを支えるホルモンや酵素などもたんぱく質からできています。卵子や精子、胎児の体や胎盤もたんぱく質を材料として作られるため、妊活や妊娠中にも欠かせない栄養素です。

不足すると体力や免疫力など、身体全体の機能低下につながります。3)

・鉄

赤血球に含まれる成分で、全身に酸素を運ぶ働きを担っています。鉄が不足すると鉄欠乏性貧血を引き起こし、集中力が下がる、疲れやすい、食欲がわかないなどの症状がみられます。4)また、鉄不足は排卵障害による不妊症のリスクを高めること、受精卵の成長を妨げる可能性があることも指摘されています。5)

鉄には肉や魚に多いヘム鉄、野菜などに多い非ヘム鉄があります。非ヘム鉄はヘム鉄に比べて吸収されにくい特徴がありますが、ビタミンCと一緒にとることで吸収率が高まります。4)

・亜鉛

味覚や免疫など、さまざまな体内の反応を助けています。また、たんぱく質やDNAの合成にもかかわっているため、胎児の発育にも重要です6)

また、男性の生殖機能にも大切な栄養素です。精子を産生する過程では、DNAの合成が盛んに行われます。亜鉛を十分にとることでDHAの正常な合成を促し、精子の数を増やし質を高めるのに役立ちます。5)

・カルシウム

カルシウムは骨や歯を作り、体を支えている栄養素です。また、出血の予防や筋肉の収縮にも関わっています。カルシウムが不足すると、血液中の濃度を保つために骨に含まれるカルシウムが溶け出してしまい、骨密度を低下させる原因となります。7)

特に妊娠・授乳期は骨密度が低下しやすい時期です。妊娠中に骨が弱くなると、産後の腰痛につながることもあります8)。妊活中から骨を強くするため、カルシウムの十分な摂取が大切です。

・DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸

n-3系脂肪酸(またはオメガ3脂肪酸)と呼ばれる脂質の一種で、主に魚介類に含まれています。神経組織を作るのに必要であるほか、心臓病の予防や認知機能の維持に効果が期待されている成分です9)

これらの脂肪酸は、女性ホルモンの分泌バランスを整える、卵子の質を高める、排卵を誘発するなどの働きがあり、妊娠しやすい身体作りに役立つことが多くの研究から明らかになっています。また、精子の質を高めることも知られており、男女ともに妊活に重要な栄養素です。10)

・葉酸

ビタミンB群の一種で、体内でDNAやたんぱく質、赤血球を合成するのに必要な成分です。不足すると巨赤芽球性貧血の原因になります9)

妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが知られています11)。そのため、妊活中〜妊娠初期(13週まで)については、サプリメントからも葉酸を摂取することが厚生労働省によって推奨されています9)

ただし、サプリメントをとったからといって、野菜などの葉酸を含む食品を摂取しなくて大丈夫ということではありません。葉酸が多い野菜には他の栄養も豊富に含まれるため、食事とサプリメントを合わせてとることが大切です。

・ビタミンA

視力や皮膚・粘膜の働きを助け、免疫機能にも関わっているビタミンです。また強い抗酸化作用を持つことが知られています。抗酸化成分は男女ともに生殖機能を高めることが知られ、特に緑黄色野菜の摂取が重要とされています。10)

油に溶けやすい性質を持つため、炒め物などにして油と一緒にとると吸収されやすくなります。

妊活にオススメの食材とは

・レバー

鉄や亜鉛などのミネラル、ビタミンAや葉酸などのビタミン類を多く含みます。

ただしビタミンAは、3,000μgを超えて毎日摂取すると胎児の奇形を引き起こす可能性があります。12)鶏または豚のレバー串1本(30g)食べると超えてしまうため、毎日食べることは控え、週1回程度とするのがおすすめです。

・赤身肉

赤身肉とは、牛や豚のヒレ、もも、ロースなどの部位の肉を指します。高たんぱく・低脂質で、ビタミン・ミネラルも多く含むのが特徴です。

加熱すると硬くなってしまうため、肉を叩いて繊維を切る、お酢やレモン汁など酸性の液体に漬けるなどの工夫をすると食べやすくなります。

・鶏肉

牛や豚に比べてたんぱく質の割合が多く、脂質が少ないのが特徴です。特に高たんぱくなのはささみやむね肉ですが、もも肉も豚肉や牛肉に比べると高たんぱく・低脂質です。そのため、部位は好みや作りたい料理に合わせて選ぶと良いでしょう。

魚介類

・さば

良質なたんぱく質源になるのはもちろん、DHAやEPAも豊富に含まれます。また、鉄や亜鉛などのミネラルも摂取できます。

手軽に取り入れるには、サバ缶を活用するのがおすすめです。骨も柔らかくなっているため、一緒に食べればカルシウムの摂取量も増やせます。

・小魚(乾物)

骨まで丸ごと食べられるため、カルシウムの補給に役立ちます。また、たんぱく質や鉄もとれます。保存がきくのも嬉しいポイントです。ふりかけや佃煮にしても、そのままおやつに食べるのもよいでしょう。

・えび

高たんぱく質・低脂質な食材のひとつです。また、タウリンやアスタキサンチンといった機能性成分は疲労回復に役立つ可能性が示されています。

中医学では生殖の働きを高め、妊活に役立つ食材とされています。

・あさり

鉄や亜鉛を多く含み、低脂質であるのが特徴です。また、タウリンも多く含まれています。

加熱すると汁が出てうま味成分と栄養素が溶け出してしまうため、みそ汁やクラムチャウダーなど煮汁ごと食べられる調理方法がおすすめです。

野菜・きのこ類

・ブロッコリー

野菜の中でも葉酸が特に多く、さらに鉄の吸収をサポートするビタミンCも豊富に含まれます。

葉酸・ビタミンCとも水に溶けやすい性質があるため、ゆでるとゆで汁に流出して量が減ってしまいます。蒸し調理やレンジ加熱にする、またはスープにしてゆで汁ごととると、栄養素を余さず摂取できます。

・ほうれん草

ブロッコリー同様に葉酸が豊富な野菜です。鉄、体内でビタミンAとして働くβ-カロテンが多く含まれます。

ほうれん草の栄養価は季節によって異なり、旬である冬はビタミンCが多くなります。

・枝豆

葉酸を多く含む食材のひとつです。女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンも含まれており、骨粗鬆症の予防に役立つことが知られています。13)

冷凍でも多く売られているため、おやつやおつまみなどに便利に使える食材です。

・にんじん

にんじんは緑黄色野菜に分類され、色素成分であるβ-カロテンを豊富に含むのが特徴です。β-カロテンは体内で分解され、ビタミンAとして働きます。

β-カロテンは脂質と一緒にとると吸収しやすくなるため、炒め物やソテーなどで食べるのがおすすめです。

結局、どんな献立にしたらいい?

献立の基本

これまでに挙げたさまざまな食材を取り入れ、必要な栄養素をバランスよくとるには、

  • 主食
  • 主菜
  • 副菜

を揃えた献立を基本に考えましょう。

主食はご飯・パン・麺などの炭水化物源になる食材を指します。ご飯なら小盛~中盛、食パン1枚、うどん1玉程度を1食の目安にしましょう。

主菜は、たんぱく質源である肉・魚・卵・大豆製品を主に使った料理です。1食に片手の手のひら大、80~100g前後の食材を使うのが目安です。

副菜は、野菜・海藻・きのこを使った料理のことです。1食の量は、生の状態で両手に乗るくらい、加熱するとかさが減るので片手に1杯分が目安です。

野菜のうち、3分の1はブロッコリー・ほうれん草・にんじんなどの緑黄色野菜から取り入れましょう。きゅうり・なす・白菜などの内側が白い淡色野菜に比べて栄養価が高い傾向にあるため、ビタミン・ミネラル・食物繊維を十分にとるのに役立ちます。

主菜と副菜を別に料理するのが大変であれば、鍋ものや具だくさんのスープなど、たんぱく質源と野菜・海藻・きのこを一緒に入れて1品にまとめてもかまいません。

缶詰や乾物を上手に使おう!

調理要らずで食べられる便利な食材を活用すれば、調理の手間が省けます。缶詰や乾物、冷凍の食材などがおすすめです。

たんぱく質を追加したいときは、サバ缶やツナ缶、焼鳥缶、シーフードミックスなどが活用できます。いずれも保存がきくため、買い置きしておくとよいでしょう。また、桜えびやしらすなどの小魚、おやつ向けに売られている「食べる小魚」もおすすめです。

野菜や海藻では、カット野菜、冷凍のブロッコリーやほうれんそう、乾燥わかめ、切干し大根などが挙げられます。冷凍野菜は一般的に旬の時期に収穫したものを使用しているため、実は栄養価が高いのが特徴です。

主食になるものは、パックご飯のほか、餅やオートミールも便利です。オートミールには不足しやすい食物繊維や鉄も多く含まれます。

これらの食材を活用して、主食・主菜・副菜を組み合わせた例がこちらです。

  • オートミールお茶漬けに卵としらすをトッピング+カットサラダ
  • 冷凍パスタにツナ缶と冷凍ブロッコリーをトッピング
  • ご飯+サバ缶+納豆+インスタントみそ汁に冷凍ほうれん草と乾燥わかめを入れる

コンビニでもバランスの良い食事はできる!

コンビニや外食は身体に悪いと思われがちですが、食べ方次第ではバランスを整えられます。自炊の場合と同様に、主食・主菜・副菜を揃えましょう。

〇コンビニ・外食のメニュー例

  • おにぎり+サラダチキン+きんぴらごぼう
  • サンドイッチ+具だくさんスープ
  • 牛丼+野菜サラダ

具だくさんスープは主菜と副菜、牛丼は主食と主菜を合わせた料理です。料理に含まれている食材を見ながら、どれに当てはまるか考えて揃えることが大切です。外食でメニューが少なく、どうしても不足するものがある場合は、次の食事でとれるように調節しましょう。

まとめ

妊娠できる身体をつくり、妊娠・出産に備えるためには、必要な栄養を食事から十分にとる必要があります。妊活や妊娠期に必要な栄養素は幅広く、取り入れたい食材もさまざまです。缶詰や冷凍野菜などの便利な食材を活用する、コンビニ食も上手に組み込むなど工夫して、主食・主菜・副菜を揃えたバランスの良い食事をとりましょう。

参考

1) 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査報告」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html

2) 厚生労働省「働く女性の心と体の応援サイト「もっとやせたい!」と思うあなたへ やせ過ぎの影響を知りましょう」

https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/skinny.html

3)公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット 三大栄養素のたんぱく質の働きと1日の摂取量」

https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/tanpaku-amino.html

4)厚生労働省「e-ヘルスネット 鉄」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-022.html

5)ジョージ・E・チャヴァロ、ウォルター・C・ウィレット、パトリック・J・スケレット「妊娠しやすい食生活 ハーバード大学調査に基づく妊娠に近づく自然な方法」マグロウヒル・エデュケーション(2013)

6)公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット 亜鉛の働きと1日の摂取量」https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-zn-cu.html

7)厚生労働省「e-ヘルスネット カルシウム」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-042.html

8)日高三貴ら「妊娠後骨粗鬆症により多発椎体骨折をきたした2例」整形外科と災害外科,68(4), 656-660(2019)https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishiseisai/68/4/68_656/_pdf

9)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

10)The Influence of Metabolic Factors and Diet on Fertility. Nutrients 2023, 15(5):1180

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36904180/

11)厚生労働省「e-ヘルスネット 葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

12)食品安全委員会「ビタミンAの過剰摂取による影響

13)中村宜督「からだにいいってホント?食品でひく機能性成分の事典」女性栄養大学出版部(2022)

三樹彩夏
【監修】管理栄養士

三樹彩夏

小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。

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