いざ、妊活。最初にやることリスト

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いざ妊活を始めよう、と思っても、具体的に何をしたら良いのか分からない人もいるのではないでしょうか。「妊活」という言葉には、妊娠するためのあらゆる行動が含まれるため、自分に何が必要か迷ってしまうこともあると思います。

この記事では、妊活をスタートするときにまず取り組みたいことを紹介します。ぜひ夫婦でやるべきリストとして整理する材料としてご活用ください。

まずは夫婦で話し合おう

妊活を始めるときには、妊活・出産・育児への考え方について、夫婦で話し合うことが大切です。

妊活は二人で行うものです。始まってから意見が食い違うことのないよう、お互いの考え方や価値観を知り、すり合わせておきましょう。恥ずかしい気持ちもあるかもしれませんが、今後の二人の人生や生活に直結することです。より具体的に、リアリティをもって話してみましょう。

話しておきたいテーマの例を3つご紹介します。

(1) なぜ子どもが欲しいのか

子どもが欲しい理由は人それぞれです。「子どもが好きだから」「好きな人との子どもをもちたい」と積極的な理由の人もいれば、「結婚したら子どもを持つものだから」「周囲が望むから」という人もいるでしょう。

子どもが欲しい理由を共有することで、妊活や子育てに対するお互いの考え方を把握できます。二人の意見を尊重し、妊活に対する心構えをしていきましょう。

(2) 妊活の方法

妊活にはさまざまな方法がありますが、まずは排卵日に合わせて性行為を行う「タイミング法」に取り組むのが一般的です。

排卵日を伝える方法もカップルによってさまざまです。直接伝えにくい場合は、カレンダーに印をつける、合言葉を用意しておく、2人で使える妊活アプリを活用するなどの方法もあります。どのように排卵日を伝えるのか、相談しておくと安心でしょう。

また、妊娠するには二人の健康が基本です。精子や卵子の質を高めて妊娠しやすい体を作るため、食事や運動、睡眠などの生活習慣を変えることも必要になるかもしれません。
妊活のためにどんなことなら改善できそうかイメージしてみましょう。

(3) 不妊治療について

妊活を始めても、すぐに妊娠するとは限りません。妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間(一般的には1年間)妊娠しない場合を「不妊」といいます1)

2021年の調査2)では、不妊について心配したことがある夫婦の割合は39.2%、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は22.7%(4.4組に1組)で、年々増加しています。
不妊治療も遠い存在ではないといえます。

ただし不妊治療は、お金も時間もかかります。

こども家庭庁が公表している「令和2年度 不妊治療の実態に関する調査研究」3)によると、人工授精1回の費用は平均約3万円、体外受精1周期の費用は約50万円でした。

また同調査の当事者アンケート(20~40代の1,636人)では、不妊治療の総額についても調査されています。検査のみやタイミング法の経験者では約7割が10万円未満でしたが、体外受精や顕微授精を経験した人では半数以上が100万円以上、200万円以上を費やした人も3割弱いました。

これらの情報と自身の経済状況を踏まえて、いつまでに子どもが欲しいのか、不妊治療を始めるならどのタイミングか、あらかじめ話し合っておくとよいでしょう。

妊活のスタート。赤ちゃんを迎える身体作りをしよう

妊活の最初のステップとしてまず必要なのが、妊娠しやすい身体作りです。その後の妊娠・出産に備えるためにも、食事や睡眠などの生活習慣を見直し、健康な身体を作りましょう。

バランスの良い食事が健康の基本

私たちの身体は、食べたものからできています。身体に必要なさまざまな栄養素を食事から取り入れることで、女性ホルモンの分泌バランスを整える、卵子の質を高める、受精卵を成長させるなどの働きが期待できます。

特に妊活中に意識してとりたい栄養素は、葉酸です。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の先天性異常である「神経管閉鎖障害」の発症リスクが高まることが知られています。4)

これらの栄養素を十分とるために、食事は1日3回、そのうち2回は主食・主菜・副菜を揃えてバランスよくとりましょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

お酒やお菓子はほどほどに

お酒は少量であれば、妊活の結果に大きく影響しないとされています。ただし過度の飲酒は妊娠率の低下につながる可能性があります。

妊娠を希望する女性では、1日にアルコール量20g(ビール500mLや日本酒1合に相当)以内に留めるとよいでしょう。5)ただし妊娠後は胎児の発育に影響するため、禁酒が必要です。6)
男性でも、過度な飲酒は精子の質の低下につながるため、女性同様に適量飲酒に留めましょう。5)

お菓子も同様に、食べ過ぎに注意する必要があります。お菓子の食べ過ぎは栄養の偏りや肥満につながります。肥満は排卵障害のリスクを高め、不妊につながる要因のひとつです。7)お菓子やお酒、甘い飲み物などの嗜好品を合わせて、1日200kcal以内を目安にするのがおすすめです。

睡眠は量と質が鍵

健康な身体作りのためには、睡眠も重要です。睡眠不足は心身の疲労蓄積はもちろん、肥満や生活習慣病、精神的な不調などにつながるリスクも高めます。

良い睡眠を得るには、睡眠の量と質を十分に確保することが重要です。8)睡眠の量(睡眠時間)は、成人では一般的に1日6~8時間が適正とされています。ただし個人差が大きく、年齢・性別・季節によっても異なります。1日6時間以上を確保しながら、日中の眠気に困らない睡眠時間を見つけることが大切です。

平日の睡眠不足を休日に取り戻す「寝だめ」が習慣になっている人もいるかもしれません。しかし、実際には睡眠を「ためる」ことはできず、平日の眠気は完全に解消されないことが知られています。

さらに平日と休日で体内時計のずれが生じることで、肥満や生活習慣病などの発症リスクになる危険性も指摘されています。平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、生活リズムを見直してみましょう。

睡眠の質は、生活習慣や嗜好品のとり方などによって左右されます。以下の項目に注意し、生活習慣を見直してみるとよいでしょう。

  • 起床時に太陽の光を浴びる
  • 寝る前にパソコンやスマートフォンなどの画面を見ない
  • 夕方以降のカフェイン摂取を避ける
  • 寝酒をしない
  • 寝る1~2時間前にぬるめのお風呂につかる
  • 寝る1時間前からリラックスする時間をとる
  • 自分なりのリラックス方法を見つける(瞑想、音楽、アロマなど)

タバコは妊活を機にやめることがベスト

喫煙は、男女ともに妊娠の成立に悪影響を及ぼします。女性の喫煙は卵子の質や排卵機能を低下させ、受精を妨げる原因のひとつです。9)男性では精子の変形や運動性の低下などの精子の質の悪化や、勃起障害につながる可能性が指摘されています。10)

女性またはパートナーの男性が喫煙していると、妊娠を希望してから妊娠するまでの時間が長くなることも知られています11)

また妊娠後の喫煙は、早産や胎児の低体重、発育の遅れなどのリスク要因です。子宮外妊娠や前置胎盤などの妊娠中のトラブルを引き起こす可能性もあります。さらに出生後も「乳幼児突然死症候群」の大きな危険因子になるとされています。

妊婦本人が喫煙しなくても、周囲の人の喫煙による「受動喫煙」も、胎児の発育遅延や低体重出生、乳幼児突然死症候群などを引き起こすといわれています。11)

妊活を機に、パートナーと一緒に禁煙することが大切です。

生理周期と基礎体温でタイミングをチェック

妊活では、妊娠しやすいタイミングを把握することが大切です。生理周期と基礎体温を記録することで、最も妊娠しやすい時期である排卵日を予測できます。基礎体温とは、生命維持に必要最小限のエネルギーしか消費していない安静時の体温です。

正常に排卵が行われている女性では、基礎体温は「低温期」と「高温期」の二相に分かれます。月経が始まると体温が下がり、約14日間低温期が続きます。低温期の最後に「体温陥落日」と言われる最も体温が低くなる日があり、この付近が排卵日と推定されます。

排卵すると体温が上昇し、次の月経まで約14日間続くのが高温期です。妊娠した場合は体温が下がらず、高温期がそのまま続きます。7)

基礎体温は朝目覚めた時、寝たままの姿勢で舌の裏の付け根に体温計を当てて測定します。基礎体温のわずかな変動を見逃さないよう、小数点第2位まで測れる婦人用体温計を使用しましょう。

数値はアプリなどに記録してグラフにすると、温度変化が分かりやすくなります。

あなたは大丈夫?風しんの免疫を確認しよう!

風しんは一般的には症状が軽い病気ですが、妊娠初期に感染すると、胎児に「先天性風しん症候群」が生じる可能性があります。主な症状は、難聴、白内障、緑内障、心臓の病気、血小板減少性紫斑病などです。12)

風しんを予防するには、風しんワクチンの予防接種を受け、免疫(抗体)をつけておくことが大切です。妊娠した女性だけでなく、パートナーである男性も、感染拡大を防ぐために風しんの抗体を持つ必要があります。

女性のほとんどは過去に風しんの予防接種を受けていますが、中には予防接種を受けても抗体がつかない人もいます。また1979年4月1日以前に生まれた男性では、公的な風しんの予防接種の制度がなかったため、風しんの抗体を持っていない人が多いといわれています。

はしか(麻疹)対策はワクチン接種。抗体検査および予防接種の助成金確認を忘れずに!

風しんに対する抗体を持っているかどうかを調べ、抗体がない場合はワクチンを接種してから妊活を始めましょう。妊娠後は予防接種を受けられないため、注意が必要です。抗体検査やワクチンの接種は、内科や婦人科、小児科などで受けられます。また、自治体によっては費用の補助制度もあるため、ホームページなどで確認してみましょう。

口腔ケアは妊娠前に!

現在むし歯や歯周病などの歯のトラブルがある人は、妊娠前に治療を受けましょう。

妊娠すると、女性ホルモンが急激に増えることで歯周病菌が増えやすい状態になります。また、唾液の粘性が高まり、口の中の自浄作用が低下します。さらにつわりによって歯みがきが難しくなる、食べ物の好みが変わる、食事回数が増えるなどの変化が起き、口腔環境が悪化しやすくなります。13)

また妊婦の歯周病が、早産や低体重児出産の確率を高める可能性も示されています。歯周病の病原細菌や、産生される炎症性物質が血流に乗って胎盤や子宮に影響するメカニズムが考えられています。14)

むし歯や歯周病のさらなる悪化や胎児への影響を減らすため、今できる治療は妊娠前に済ませておくことが大切です。

医療機関でより詳しい検査を

婦人科では、将来の妊娠のためにチェックしておきたい項目をまとめて検査することも可能です。ブライダルチェックや、最近ではプレコンセプションチェックとも呼ばれる検査で、子宮や卵巣の状態、不妊に関わるホルモンの値、風しんなどの抗体の検査がセットになっています。

男性も、精子の質や男性ホルモン、風しんの抗体などをまとめてチェックできる検査があります。

妊娠や出産に影響がある病気がないかを知り、あった場合は早めに治療を行うことで、健康な妊娠・出産への準備に役立ちます。

最後に:妊活は、夫婦二人で一緒に

今回の記事では、妊活を始めるときにまず取り組みたいことをまとめました。妊活は夫婦二人で進めていくものです。まずは将来についてよく話し合い、考え方をすり合わせることが大切です。また、健康な身体作りは妊娠する女性だけでなく、男性にも必要になります。

時間がかかることもありますが、二人で同じ目標に向かい、協力して生活習慣の改善を行っていきましょう。

1) 公益社団法人日本産科婦人科学会「不妊症」

https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15

2) 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」

https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp

3) こども家庭庁「令和2年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業「不妊治療の実態に関する調査研究」(最終報告書)

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/bef0ee9a-c14d-4203-b02b-051adf80f495/6c11e6f8/20230401_policies_boshihoken_funin_24.pdf

4) 厚生労働省「e-ヘルスネット 葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

5) Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine and the Practice Committee of the Society for Reproductive Endocrinology and Infertility. Optimizing natural fertility: a committee opinion. Fertil Steril. 2022, 117(1):53-63

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34815068/

6) 厚生労働省「e-ヘルスネット 胎児性アルコール・スペクトラム障害」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-015.html

7) 国立研究開発法人国立成育医療研究センター「プレコンノート」

https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/preconnote/action/action1.html

8) 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」

https://www.dietitian.or.jp/trends/upload/data/342_Guide.pdf

9) 小西郁生, 近藤英治.  ママ、たばこを吸わないで! 産婦人科の立場から. 禁煙科学. 7(5):1-8(2013)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jascs/vol.7/05/vol.7_1/_article/-char/ja/

10) 厚生労働省「e-ヘルスネット 喫煙によるその他の健康影響」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-004.html

11) 厚生労働省「e-ヘルスネット 女性の喫煙・受動喫煙の状況と、妊娠出産などへの影響」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-02-003.html

12) 内閣府「政府広報オンライン 妊娠を希望する女性や家族・職場の人も。生まれてくる赤ちゃんのために、風しんの予防接種を!」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201406/3.html

13) 公益社団法人日本歯科医師会「歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020 妊娠時の歯やお口のケア」

https://www.jda.or.jp/park/prevent/ninsinji.html

14) 坂本治美ら. 妊娠期の歯周状態と低体重児出産のリスクに関する観察研究. 口腔衛生学会雑誌 66:322-327, 2016

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jdh/66/3/66_322/_pdf

三樹彩夏
【監修】管理栄養士

三樹彩夏

小児科・内科クリニックに勤務後、2020年にフリーランスに転身。「健康的な生活を当たり前にする」をモットーに、ダイエットサポートやライター業を通して食の大切さを伝えている。

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